社会保険労務士事務所のホームページで、いちばん多い形はこれです。「業務内容」「事務所概要」「料金表」「お問い合わせ」。
この4つが並んでいれば情報としては足りています。それでも問い合わせが来ないのは、依頼者が「これは自分が相談していい話なのか」を判断できないからです。
社労士事務所の制作見本を作るときに決めたことを、7つに分けて書きます。実物は制作実績と制作見本のページに置いてあります(架空の事務所を使った見本です)。
<!-- def --> 相談シーンとは、依頼者が実際に困っている場面の言葉で、相談の入口を並べる書き方のことです。業務名の一覧とは、読む人の探し方が違います。
1. 入口を「業務内容」ではなく「相談シーン」にする
トップに並べたのは、サービス名ではなく依頼者が置かれている状況です。
- 辞めた社員から、残業代を請求された
- 就業規則を10年以上、見直していない
- 労働基準監督署から、調査の連絡が来た
- 助成金があると聞いたが、よく分からない
「顧問契約」「各種手続き代行」では、自分の話だと気づけません。上のように書くと、依頼者は自分に近いものをひとつ選びます。その先で「これは社労士に頼める話だった」と分かります。
2. それぞれに「経営者の生の言葉」を1行添える
各ケースの説明のあとに、実際に言われそうな一言を置きました。
「うちはみなし残業制だから追加の残業代は出ない、と思っていました」 「作ったのは前の担当者で、中身を読んだことがありません」 「何を持っていけばいいのかも分かりません」
この1行があると、読んだ人は「自分と同じだ」と気づきます。説明文だけでは、ここまで届きません。先生が日常的に聞いている言葉を、そのまま書くのがいちばん効きます。
3. 法令の数字を、先に大きく見せる
見本では「10人」という数字を、それだけで1つのブロックにしました。
常時10人以上の労働者を使用する事業場には、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務づけられています(労働基準法第89条)。この事実を、説明文の途中ではなく数字として見せます。
「うちはまだ小さいから関係ない」と思っている経営者に、関係あることを気づかせるのがここの役目です。義務は人が増えると静かに増えていきます。その静かな部分を、数字で可視化します。
4. 判定できる簡単なしくみを1つ入れる
従業員数を動かすと、その規模で必要になる手続きが表示されるようにしました。
大がかりなシステムは要りません。自分の状況が具体的に表示されると、相談内容が固まった状態で連絡が来ます。「何を頼めばいいか分かりません」から始まる問い合わせが減り、初回相談の時間が短くなります。
ただし、こうしたしくみには必ず注意書きを添えてください。見本では「主なものを抜き出した簡易的な一覧です。業種・雇用形態・事業場の分かれ方によって扱いが変わります。正確な判断は個別にご相談ください」と書いています。判定できるように見せた瞬間に、それを信じた人が生まれるので、範囲を明示するのは設計の一部です。
5. 料金は先に出し、増えないと書く
料金表を出すかどうかは、事務所によって考え方が分かれます。見本では出す側に振りました。そのうえで、金額の隣にこう書きました。
「お見積り後に金額が増えることはありません。範囲を超える作業が出た場合は、着手前に必ずご相談します。」
依頼者が気にしているのは金額の高さより、あとから増えるかどうかです。ここに一文入れるだけで、問い合わせの心理的な負担が変わります。
6. 「顧問契約をお勧めしません」と書く
初回相談の欄に、こう書きました。「その場で顧問契約をお勧めすることはありません」。
売り込まれる不安があると、相談の一歩目が重くなります。先に「売り込みません」と書いてしまうほうが、結果として相談が増えます。同じ発想で、他の社労士と契約している人向けにも「乗り換えをお勧めすることはいたしません」と入れました。
7. 保証できないことは、保証しないと書く
助成金の欄には、こう書いています。
「受給を保証することはできません。要件を満たすかどうかをお調べし、満たさない場合はその旨をお伝えします。申請をお勧めしないこともあります。」
士業には、それぞれの会が定めた広告に関する規程があります。誇大な表現や、根拠のない比較は使えません。ここを守るために表現を削っていくと文章が弱くなりがちですが、「保証しない」と自分から書くと、規程を守りながら誠実さが伝わる形になります。
実績を数字で出す場合も同じです。いつ時点の、どの範囲の数字なのかを必ず添えてください。
細かいところでは、駐車場の台数を書きました
アクセスの欄に「駐車場3台(ビル裏手)」と入れています。車で来る人にとって、これは住所より大事な情報です。
同じ理由で、受付時間には「土日祝は事前予約で対応」まで書きました。書いていないことは「ない」と読まれます。
まとめ|社労士事務所のホームページで決めた7つのこと
7つを並べ直すと、全部同じことを言っています。依頼者が自分で判断できる状態を作るということです。
- 自分の状況が書いてあるか(1・2)
- 自分に義務があるかが分かるか(3・4)
- いくらかかるか、増えないか(5)
- 断ってもいいのか(6)
- 保証されないことは何か(7)
この5つに答えているサイトは、そう多くありません。逆に言えば、ここを埋めるだけで違いが出ます。
制作と記事運用の内容はサービスと料金の考え方にまとめています。士業のサイトで問い合わせを増やす考え方は士業事務所のサイトで問い合わせが増えるのは、料金表より「相談シーン」に、Googleマップでの見つかりやすさは社労士のGoogleマップ順位を6事務所ぶん実測した記事に書きました。
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よくいただく質問
料金は、本当に出したほうがいいですか
事務所によって考え方が分かれるところです。見本では出す側に振りました。
理由は、依頼者が止まるのは「高いかどうか」より「いくらか分からない」段階だからです。金額が出せない業務なら、決まり方だけでも書いてください。「従業員数×◯円」「相談は1時間ごと」のように、計算の仕方が分かれば見当がつきます。
「顧問契約をお勧めしません」と書いて、売上は落ちませんか
書いたのは初回相談の欄です。その場で契約を迫られる心配があると、相談そのものをやめる人がいます。
顧問契約を勧めないのではなく、初回相談の場では勧めない、という宣言です。相談の件数が増えれば、そのなかから顧問になる方も増えます。
判定のしくみは、自分で作れますか
中身は「従業員数を入れると、その規模で必要になる手続きが出る」だけなので、条件そのものは先生の頭の中にあります。
作るのに要るのは知識ではなく実装です。ここは制作側の仕事なので、どの数字でどう分岐するかの表さえいただければ形にできます。
この7つを実際に1枚へ落とした形は、社労士事務所の制作見本で見られます。就業規則の10人の扱いと、料金7項目の出し方も入っています。
