「これは書いていいのか」。
医療機関のホームページを作り直すとき、いちばん時間を取られるのがこの確認です。制作会社に聞いても「大丈夫だと思います」としか返ってこない。根拠が出てこないまま、公開日だけが近づいてくる。
自院のサイトを自分で点検できるように、確認する順番でまとめました。
見るべき項目を業種別に並べたものは公開する前に見ている29項目にあります。自院のサイトを実際に見てほしい場合は無料のサイト診断からどうぞ。
<!-- def --> 限定解除とは、4つの要件を満たしたときに限って、広告できる事項の制限を外し、自由診療の内容や費用まで書けるようにする仕組みのことです。
まず、名前が変わっています
2018年6月から、医療機関のウェブサイトは医療広告の規制対象になりました。それ以前は「患者さんが自ら情報を取りに行くもの」として、原則的には規制の外に置かれていました。
そして2026年3月30日の改正で、通称が「医療広告ガイドライン」から「医療広告等ガイドライン」に変わりました(施行は2026年4月1日)。オンライン診療を受けられる施設についての広告規制が新しく加わったことに伴うものです。
つまり、いま自院のサイトを点検するなら、見るべきは2026年4月1日施行の版です。「2018年のガイドライン」で解説している記事や、それを前提に作られたチェックリストは、すでに1つ前の世代のものです。
どのくらい見つかっているのか
厚生労働省は、医療機関のウェブサイトを調べる監視事業を続けています。
令和7年度に審査された2,092サイトのうち、違反が見つかったのは1,842サイト。88.0%です(2026年2月28日時点)。違反の総数は5,225件で、1サイトあたり平均2.8件。
内訳の上位は、広告できない事項を書いていたものが1,595件、誇大な表現が1,215件、費用を強調したものが766件、術前術後の写真が745件と続きます。分野別では美容が803サイト、歯科が377サイトで突出していました。
9割近くというのは、裏を返せば「うちだけが特別まずい」わけではないということです。ただし指摘を受ければ直すことになります。
見落としが多い4つの表現
1. 患者さんの体験談
「先生のおかげで痛みが消えました」。院内に貼るぶんには問題のない声でも、ホームページに載せると規制に触れます。治療の内容や効果について、患者さん個人の主観にもとづく体験談は、広告として認められていません。
効果には個人差があり、体験談を読んだ人が「自分も同じ結果になる」と誤認するおそれがあるためです。
ここで多い質問が「Googleの口コミはどうなるのか」です。
第三者が運営する口コミサイトや、患者さんが個人のSNSに書いたものは、医療機関が費用の負担などの便宜を図って書いてもらったのでなければ、広告に当たりません。自然に書かれた口コミを消して回る必要はありません。
ただし、次の2つはアウトになります。サイトの運営者に頼んで、否定的な口コミを削除してもらうこと。そして良い口コミを上のほうに優先して表示してもらうこと。どちらも、医療機関の依頼で有利に編集させたことになり、誘引性が生じると整理されています。
2. ビフォーアフター写真
術前術後の写真も、そのまま並べるだけでは認められません。治療内容、費用、主なリスクや副作用の説明を付けることで、はじめて掲載できるようになります。
見落としやすいのが、この説明の置き方です。別ページへのリンクに逃がすことも、良いことだけを大きく書いて説明だけ極端に小さい文字にすることも、認められていません。同じ画面で、同じくらいの読みやすさで置く必要があります。
あと2つ、抜けやすい点があります。術前だけ、あるいは術後だけの片方の写真も認められません。そして加工や修正をした写真は、虚偽広告として扱われます。明るさを整えるつもりの調整でも、印象が変わるものは避けてください。
なお、後述する限定解除が効かない媒体では、そもそも術前術後の写真は載せられません。チラシ、看板、バナー広告がこれに当たります。
3. 比較して優れていると示す表現
「県内で一番の実績」「他院より安全」。他院との比較で自院が優れていると示す表現は、客観的な事実であっても認められません。「日本一」「最高」といった最上級の表現も同じです。
4. 誇大な表現
「必ず治ります」「絶対に安全」。断定的な表現は、事実と異なる期待を持たせるおそれがあります。効果を保証する書き方は避けてください。
「初回無料」は違法なのか
よく聞かれるので、正確に書いておきます。
キャンペーンや割引の強調は、法律が禁止している類型そのものではありません。ガイドラインが「品位を損ねる内容の広告」として、厳に慎むべきとしている類型です。位置づけとしては行政指導の根拠になります。
具体例として挙げられているのは「今なら○円でキャンペーン実施中」「200,000円→100,000円 50%OFF」「治療し放題プラン」「無料相談された方全員に○○をプレゼント」といったものです。
逆に、価格を書いてはいけないという誤解も広まっています。これも違います。自費診療では、後述のとおり費用の記載はむしろ必須です。費用を太字にすることも、下線を引くことも認められています。「無料で健康相談を実施している旨」自体も広告できます。
禁じられているのは、割引の幅と、期間限定であること、つまりお得感を前面に出すことです。料金を改定したなら、割引率を書かずに改定後の金額だけを載せる。それで足ります。
自費診療を載せるなら、追加の記載が必要です
通常は広告できない事項でも、次の要件を満たせば掲載できます。これを限定解除と呼びます。
すべての場合に必要な2つ
- 患者さんが自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトであること
- 問い合わせ先(電話番号やメールアドレス)を記載していること
自費診療について書く場合に、追加で必要な2つ
- 通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間と回数を記載していること
- 主なリスク、副作用等を記載していること
3と4が抜けているサイトを、よく見かけます。費用は書いてあるのに、期間とリスクがない。ここが最も多い抜けです。費用が一件ごとに変わるなら、最低額から最高額までの幅で示してください。よく発生する追加費用も含めた金額です。
そして、ここに大きな落とし穴があります。
1の「自ら求めて入手する情報」に、バナー広告と、検索結果に出るスポンサー表示は含まれません。費用を払って上位に表示させたものも同じです。つまりリスティング広告を出稿しているなら、その先のページで限定解除は効きません。広告を出しながら自費診療のページを作っている場合は、前提から確認し直す必要があります。
未承認の医薬品を使う自費診療は、さらに5つの記載が加わります。未承認であること、入手の経路(個人輸入かどうか)、国内で承認された同じ効能の医薬品の有無、諸外国での安全性に関する情報、そして副作用被害救済制度の対象外であること。美容の分野では、ここが抜けている例が目立ちます。
接骨院・鍼灸院は、別のガイドラインです
ここを混同している解説記事が多いので、分けて書いておきます。
接骨院・整骨院・鍼灸院にかかるのは、この医療広告等ガイドラインではありません。2025年2月18日に発出された、あはき・柔整の広告ガイドラインです。根拠になる法律も、柔道整復師法とあはき法で別のものです。
いちばん違うのは、接骨院には限定解除の制度がないという点です。条件を整えれば書けるようになる、という道がありません。効果や適応症の表現は、どう工夫しても使えないことになります。
詳しくは新潟市の接骨院115院のGoogleマップ順位を測ったら、10位以内は42院でしたの後半にまとめました。
士業の場合も、考え方は同じです
弁護士、社会保険労務士、行政書士など、士業にもそれぞれの会が定めた広告に関する規程があります。誇大な表現や、根拠のない比較を避けるという考え方は医療と共通です。実績を数字で出す場合は、いつ時点の、どの範囲の数字なのかを添えてください。
まとめ|医療広告等ガイドラインで自院のサイトを見分ける要点
- 2018年6月から、医療機関のウェブサイトも広告規制の対象です。それ以前に作ったまま触っていないサイトには、規制の外だった時代の表現が残っている可能性があります
- 見落としが多いのは4つ。患者さんの体験談/ビフォーアフター写真/他院との比較/断定的な表現
- ビフォーアフター写真は、治療内容・費用・主なリスク・副作用を同じ画面に添えれば掲載できます
- 自費診療を載せるなら、限定解除の要件を満たす追加の記載が要ります
- 接骨院・鍼灸院は別のガイドラインです。医科の限定解除にあたる仕組みがありません
- 責任は医療機関だけに向くものではありません。ガイドラインは制作会社を含む「何人も」を対象と書いています
よくいただく質問
違反すると、すぐに罰則ですか
いいえ。順番があります。
まず任意の調査があり、次に行政指導が入ります。ここで是正すれば、それで終わります。従わない場合に報告命令や立入検査、中止命令・是正命令と進み、罰則が発動するのは、この命令に従わなかった段階です。
例外は虚偽広告で、これだけは直接の罰則があります。いずれも6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。よく「6月以下の懲役」と書かれていますが、刑法の改正で拘禁刑に変わっています。
なお、法人の従業者が違反した場合は、行為をした人だけでなく法人にも罰金が科されます。
ホームページを作った制作会社に責任はありますか
あります。ガイドラインは「マスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者又は一般人等、何人も広告規制の対象」と書いています。
そのうえで、広告を企画・制作した側は「広告依頼者とともに指導等の対象となり得る」とされています。中止命令や是正命令が代理店の代表者あてに出ることもあります。
制作を頼む側から見れば、これは選び方の基準になります。規制を知らない相手に頼むと、指導を受けるのは院と制作会社の両方です。
古いサイトを放置しています。何から見ればいいですか
公開年を確認してください。2018年6月より前に作ったまま触っていないなら、規制の外だった時代の表現が残っている可能性が高いです。
順番としては、体験談の有無、術前術後の写真、キャンペーン表記、自費診療ページのリスク記載。この4つを見れば、指摘されやすいところはおおむね拾えます。
迷ったら、根拠を出せる人に確認する
僕はYMAA認証(薬機法・医療法にもとづく適法な広告表現を扱えることの個人認証)を持っています。制作するホームページでは、「書ける/書けない」の判断と、その根拠までをこちらで引き受けます。先生に調べていただく必要はありません。
接骨院・鍼灸院については、この認証の範囲外になるため、あはき・柔整のガイドライン本文と告示を根拠に判断しています。どちらの場合も、指針のどこに書いてあるかまでお示しします。
いまのサイトで気になる表現があれば、無料のサイト診断でお送りください。どこが引っかかりそうか、理由を添えてお返しします。
具体的なサービスの内容はサービスと料金の考え方にまとめています。
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この記事の出典(いずれも厚生労働省)
- 医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日改正・令和8年4月1日施行)および同Q&A
- 医業等に係るウェブサイトの調査・監視体制強化事業(令和7年度実績・2026年2月28日時点)
- あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業若しくは柔道整復業又はこれらの施術所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針(令和7年2月18日・医政発0218第1号)
数字は2026年8月10日に確認した時点のものです。法令とガイドラインは改正されます。実際の判断は最新版でご確認ください。
自費診療を書くときの並べ方は、歯科医院の制作見本で見られます。費用・期間・回数とリスクを、同じ場所に併記しています。
