「法令チェック込み」。
医療機関のホームページ制作では、どの会社もこう書いています。ただ、中身が書いてあるのを見たことがありません。何を、どういう順番で、どの条文を根拠に見ているのか。ここが出ていないと、頼む側は比べようがありません。
なので、僕が公開前に見ている項目を全部出します。そのままご自身の点検にも使えます。
先に、いちばん大事なことを1つ。
クリニックと接骨院では、かかるガイドラインが別のものです。同じ「医療」でまとめている記事が多いのですが、根拠になる法律から違います。だからチェック表も分けています。
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<!-- def --> 医療広告とは、患者さんの受診を誘う意図があり、かつ医療機関の名前が分かる表示のことです。この2つがそろうと、媒体を問わず規制がかかります。
クリニック・歯科:16項目
根拠は医療広告等ガイドライン。2026年3月30日の改正版(2026年4月1日施行)です。名称に「等」が入ったのはこの改正からで、オンライン診療を受けられる施設の広告規制が新しく加わりました。
書いてある内容(9項目)
- 断定的な表現がないか — 「絶対に治る」「100%」「必ず」。虚偽広告に当たり、これだけは直接の罰則があります
- 誇大な表現がないか — 効果を保証する書き方、事実より良く見せる書き方
- 他院との比較がないか — 「他院より安全」。客観的な事実であっても認められません
- 最上級の表現がないか — 「日本一」「県内で一番」「最高水準」
- 治療の内容や効果に関する体験談がないか — 患者さんの主観にもとづくもの。掲載場所がサイト内なら不可です
- 口コミサイトへの働きかけがないか — 否定的な口コミの削除依頼、良い口コミの優先表示の依頼。どちらも誘引性が生じます
- 費用を強調していないか — 割引の幅、期間限定、「今なら」。法律の禁止類型ではなく「品位を損ねる広告」として厳に慎むべきとされる類型です
- 提供する医療と関係ない誘引がないか — 「相談された方全員にプレゼント」
- オンライン診療の受診施設に関する表示 — 2026年4月に加わった新しい規制です
術前術後の写真(3項目)
- 説明が4点そろっているか — 治療内容、費用、主なリスク、副作用
- その説明が同じ画面にあるか — 別ページへのリンクに逃がすことも、極端に小さい文字にすることも認められません
- 片側だけになっていないか/加工していないか — 術前だけ、術後だけも不可。加工した写真は虚偽広告です
自費診療の限定解除(4項目)
- 問い合わせ先が明示されているか — 電話番号やメールアドレス
- 治療内容・標準的な費用・治療期間・回数が書いてあるか — 費用が一定でないなら、最低額から最高額の幅で
- 主なリスクと副作用が書いてあるか — ここと14が、いちばんよく抜けています
- リスティング広告を出していないか — 見落とされやすい項目です。バナー広告や検索結果のスポンサー表示は「患者さんが自ら求めて入手する情報」に当たらないため、その先のページでは限定解除が効きません
未承認の医薬品を使う自費診療は、ここに5項目が加わります。未承認であること、入手経路、国内承認品の有無、諸外国の安全性情報、副作用被害救済制度の対象外であること。美容の分野では、ここが抜けている例が目立ちます。
接骨院・整骨院・鍼灸院:10項目
根拠はあはき・柔整の広告ガイドライン。2025年2月18日に厚生労働省から発出されました(医政発0218第1号)。根拠になる法律は柔道整復師法と、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律です。
医科と決定的に違うのは、限定解除の制度がないことです。条件を整えれば書けるようになる、という道がありません。
- 広告できる事項の範囲に収まっているか — 施術者の氏名・住所、施術所の名称・電話番号・所在地、施術日と施術時間、それに告示の7項目(ほねつぎ/接骨、届出をした旨、療養費の支給申請ができる旨、予約、休日夜間、出張、駐車設備)
- 技能・施術方法・経歴を書いていないか — 専門分野、研修歴、所属学会、受賞歴。法律に明文の禁止があります
- 適応症や効果を書いていないか — 「腰痛に効きます」「根本改善」。限定解除がないので、条件を整えても書けません
- 「各種保険取扱」と書いていないか — 指針が広告不可の例として名指ししている表現です。「労災保険取扱」「自賠責保険取扱」「交通事故取扱」も同じです
- 療養費の書き方が正しいか — 骨折と脱臼の患部への施術は、応急処置を除いて医師の同意が必要である旨を明示する必要があります
- 屋号に使えない語が入っていないか — 整体、リラクゼーション、カイロプラクティック、サロン、ほぐし処、骨盤矯正、交通事故専門、クリニック、リハビリ、メディカル。英語にしても言い換えても不可です
- 施術業態が混ざっていないか — 「○○鍼灸接骨院」は不可、「○○接骨院・鍼灸院」の併記なら可。中黒の有無だけで変わります
- 「口コミ1位」「地域No.1」を書いていないか — 指針が掲載すべきでない例として挙げています
- 良い口コミだけを選んで載せていないか — 意図的な取捨選択として同じく挙げられています
- リスティング広告を出していないか — 広告を1本出すと、そこからリンクした自院サイトが広告と一体のものとして扱われます。自然検索だけの状態とは法律上の位置づけが変わります
士業事務所:3項目
- 所属会の広告規程に反していないか — 会ごとに規程があります
- 実績の数字に、いつ時点・どの範囲かが添えてあるか
- 根拠のない比較や、誇大な表現がないか
なぜ全部出すのか
理由は2つあります。
1つは、この項目を知らない制作会社に頼むと、指導を受けるのが事業者と制作会社の両方になるからです。医療広告等ガイドラインは「マスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者又は一般人等、何人も広告規制の対象」と書いていて、制作した側も「広告依頼者とともに指導等の対象となり得る」とされています。あはき・柔整のガイドラインにも同じ趣旨の記載があります。
もう1つは、この規模のチェックが必要だと知っていただくためです。厚生労働省の監視事業では、令和7年度に審査された2,092サイトのうち1,842サイト、88.0%に違反が見つかっています(2026年2月28日時点)。違反の総数は5,225件で、1サイトあたり平均2.8件。分野別では美容が803サイト、歯科が377サイトでした。
「大丈夫だと思います」で済ませられる数字ではありません。
まとめ|サイト公開前に見る29項目の要点
- クリニック・歯科は16項目。根拠は医療広告等ガイドライン(2026年3月30日改正・同年4月1日施行)
- 接骨院・整骨院・鍼灸院は10項目。根拠はあはき・柔整の広告ガイドライン(2025年2月18日発出・医政発0218第1号)
- 士業事務所は3項目。所属会の規程と、実績数字の時点・範囲の明記
- 術前術後の写真は、治療内容・費用・主なリスク・副作用の4点を同じ画面に置くこと。別ページへのリンクに逃がすことは認められません
- YMAA認証は柔道整復師法とあはき法をカバーしません。接骨院はガイドライン本文と告示を根拠に判断します
よくいただく質問
見つかったら、すぐに罰則ですか
いいえ。まず任意の調査があり、次に行政指導が入ります。ここで直せば終わりです。従わない場合に報告命令、中止命令・是正命令と進み、罰則が発動するのはその命令に従わなかった段階です。虚偽広告だけは例外で、直接の罰則があります。
厚生労働省自身が「自治体は法に基づく措置の実績やノウハウが不足している」と認めており、実務上は行政指導で終わるのが大半です。ただし、指摘されれば直すことになります。
自分でチェックできますか
29項目のうち、書いてある内容を見るだけの部分はご自身でも確認できます。難しいのは接骨院の屋号と、自費診療の限定解除です。屋号は看板や届出にも関わるので、変えるとなると影響範囲が広くなります。
判断に迷う箇所だけ送っていただく形でも構いません。
YMAA認証があれば全部カバーできますか
いいえ。YMAA認証は薬機法と医療法にもとづく認証で、柔道整復師法とあはき法は含みません。僕は認証を持っていますが、接骨院・鍼灸院についてはこの認証とは別に、ガイドライン本文と告示を根拠に判断しています。
ここを分けずに「医療広告に強い」とだけ書いてある場合は、接骨院の案件で何を根拠にするのかを聞いてみてください。
いまのサイトを、この29項目で見ます
無料のサイト診断でURLをお送りください。この項目に沿って確認して、引っかかりそうな箇所を、理由と根拠を添えてお返しします。無料で、売り込みはしません。
制作と運用の内容はサービスと料金の考え方にまとめています。ガイドラインそのものの解説は医療広告等ガイドラインで「書いてはいけない表現」を、自院のサイトで見分ける方法に書きました。
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出典(いずれも厚生労働省)
- 医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日改正・令和8年4月1日施行)および同Q&A、ウェブサイト等の事例解説書 第6版
- あはき・柔整の広告ガイドライン(令和7年2月18日・医政発0218第1号)および平成11年厚生省告示第69号・第70号
- 医業等に係るウェブサイトの調査・監視体制強化事業(令和7年度実績・2026年2月28日時点)
2026年8月10日に確認した時点の内容です。法令とガイドラインは改正されます。
自費診療と保険診療をどう並べるかは、眼科クリニックの制作見本に置いてあります。受けないという選択も、同じ高さに並べました。
