自院のホームページに載せてある文章を、そのままInstagramやXに貼っていませんか。
この作業は、業種によっては規制の線をまたぎます。接骨院・鍼灸院は、ホームページが原則として広告に当たらないのに、SNSの投稿は広告として扱われるからです。ホームページで許されていた書き方が、コピーして貼った瞬間に許されなくなります。
理由は、広告に当たるかどうかを決める要件が媒体ごとに違うからです。この記事では、厚生労働省の指針2本と日本弁護士連合会の指針1本を原文にあたって、接骨院・鍼灸院、クリニック・歯科、士業の順に並べます。読み終わると、いま自分のアカウントで消すべき投稿があるかどうかが判断できます。
自院のSNSとホームページを合わせて見てほしい場合は、無料のサイト診断からどうぞ。表現の指摘だけ受け取って終わりにしていただいて構いません。
先に結論
| 業種 | ホームページ | SNSの投稿 | 逃げ道(限定解除) |
|---|---|---|---|
| 接骨院・鍼灸院 | 原則、広告に当たらない | 広告に当たる | 無い |
| クリニック・歯科 | 広告に当たる | 広告に当たる | ある(条件つき) |
| 士業(弁護士の例) | 広告に当たる | 広告に当たる | 規程に該当なし |
いちばん段差が大きいのが接骨院・鍼灸院です。ホームページでは書けたことが、SNSでは書けません。
接骨院・鍼灸院:ホームページとSNSで、扱いが変わります
根拠は「あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業若しくは柔道整復業又はこれらの施術所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針」です。2025年2月18日に厚生労働省から発出されました(医政発0218第1号)。
広告かどうかは、3つの要件で決まります
指針のⅡの1は、広告の該当性をこう定めています。
① 利用者を施術所等に誘引する意図があること 【誘引性】 ② 施術者の氏名又は施術所等の名称が特定可能であること 【特定性】 ③ 一般人が認知できる状態にあること 【認知性】
この3つをすべて満たしたときだけ、広告として規制がかかります。
認知性とは、一般の人がその情報を目にできる状態にあることです。見に行かなくても目に入るかどうか、と言い換えられます。ここに③が残っているのが、あとで効いてきます。
ホームページが外れる理由
指針のⅡの6(6)に、こう書いてあります。
インターネット上の施術所等のウェブサイト等は、当該施術所等の情報を得ようとの目的を有する者が、自らURLを入力したり、検索サイトで検索した上で閲覧するものであるため、本指針Ⅱの1に掲げた③の「認知性」を満たさないものとして、従来情報提供や広報として扱ってきた。これらについては、引き続き原則として広告とは見なさないこととする。
見に来る人が自分で探して開いている。だから「一般人が認知できる状態」には当たらない、という整理です。院のホームページに施術の説明を書いても、それ自体は広告になりません。
SNSが入る理由
同じ指針のⅥの1(1)イが、SNSを名指ししています。読んでいて驚いたのはここでした。
公開範囲が限られている場合に関しても、公開時においては公開範囲に含まれる者のみが閲覧することとなるが、SNS の性質上、公開範囲に含まれる者が自ら当該書き込み等の情報を求めるものではない上、閲覧者が、当該書き込みについて何らかの反応を起こすことで、2次的、3次的に伝達されることから、本指針Ⅱの1に掲げた③の要件を満たすものであり、さらにⅡの1に掲げた①及び②の要件を満たす場合には、広告として取り扱うこと。
公開範囲を限った、いわゆる鍵アカウントでも③を満たすと書かれています。理由が2つ示されています。フォロワーは自分からその投稿を求めたわけではないこと。そして誰かが反応すれば2次、3次に伝わっていくこと。
タイムラインは、見に行くものではなく流れてくるものです。ホームページを外していた理屈が、SNSでは反対向きに働きます。

広告になると、何が落ちるか
クリニックには「限定解除」という仕組みがあり、条件を整えれば広告できる範囲を広げられます。接骨院・鍼灸院には、この仕組みがありません。広告として扱われた時点で、書けるのは法定の事項と告示で認められた項目だけになります。
SNSの投稿から落ちるのは、たとえばこのあたりです。
- 適応症や施術の効果(「腰痛に効きます」「根本改善」)
- 施術者の技能、施術方法、経歴(専門分野、研修歴、所属学会、受賞歴)
- 「各種保険取扱」「交通事故取扱」「労災保険取扱」
- 同業と比べて自院が上だと示す表現(「地域でいちばん」「口コミ1位」のたぐい)
罰則は30万円以下の罰金です(あはき師法第13条の8、柔整師法第30条)。もう1つ、指針の告発の対象者にはこう書かれています。
広告代理店、雑誌社、新聞社、放送局、公共施設、宿泊施設、商業施設等の場合には、その代表者とし
投稿を代行した業者も、対象に入ります。
クリニック・歯科:SNSも広告ですが、逃げ道はあります
医科と歯科は、広告の要件から認知性が外れています。医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日 最終改正)の定義は、誘引性と特定性、そして医業等に関する内容であること。ホームページも広告です。
そのかわり、限定解除の4要件を満たせば自由診療の内容まで書けます。ではSNSでも同じかというと、条件の満たし方が変わります。
2026年3月30日、厚生労働省は「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」を出しました。この版でSNSと動画の章が新しく作られています。中身を4点だけ引きます。
1つの投稿が、単独で1つの広告
解説書にこう書かれています。
SNS上の1つの投稿は、単独で1つの広告として取り扱われる。そのため、各投稿内において、当該投稿のみで必要な情報が完結し、かつ一体的で一覧性のある情報提供が行われていることが求められる。
自由診療の話を1投稿でするなら、その投稿の中で治療内容、費用、主なリスクと副作用まで揃っている必要があります。連載のように分けると、それぞれの投稿が単独で審査されます。
「詳しくはホームページで」が通りません
いちばん多いであろう形が、これです。投稿には施術の魅力だけ書いて、詳細は自院サイトへリンクする。解説書の(24)は、この形を認めていません。
治療内容や費用、リスクの説明を、リンクを張った先のページに置く形は採用してはならない、というのが元の指針の書き方です。SNSでも同じ扱いになります。
プロフィールも、返信も、ハッシュタグも
解説書の(39)は、SNSの広告を3つの構成に分けています。プロフィール、投稿、返信です。そして、禁止事項(虚偽、誇大、比較優良、体験談)はそのいずれかに含まれていれば違反になります。
あわせて、こうも書かれています。
・「②投稿」や「③返信」内のハッシュタグ(#)によるタグ付け部分 (※投稿内容と関係のないハッシュタグによる誘引は不適切) ・個人アカウントによる情報であっても、医療機関・医師等への特定性と誘引性をいずれも有する場合
ハッシュタグも広告の一部です。届く量を増やすために内容と関係ない語を足す運用は、ここに引っかかります。院長個人のアカウントも、院が特定できて誘引の意図があれば医療広告です。
患者さんの投稿を引用するのも同じ
解説書の(41)は、来院した方の投稿を公式アカウントが引用する形を挙げて、こう書いています。
他者の投稿を引用することで、自院のサービス等の体験談を紹介している場合も違反となる
自分で書かなくても、引用して見せた時点で体験談の広告になります。
士業:媒体の制限はありません。ただしDMは別です
弁護士の例を挙げます。日弁連の「業務広告に関する指針」には、こうあります。
広告媒体は、看板、新聞、電話帳等はもちろん、ポスター、電車、バス等の中吊り広告、新聞の折込み広告、ウェブサイト、動画サイト、SNS等のあらゆる媒体が広く利用できるものであり、媒体自体から直ちに一般的に禁止されるものはない。
SNSを使うこと自体に制限はありません。医療のような媒体ごとの段差もありません。
線が引かれているのは、DMのほうでした。
SNS上で閲覧者が「友達(友だち)」登録や「相互フォロー」をしていたとしても、規程との関係では「面識のない者」に該当し、かつ、規程第5条第2項の承諾を得たことにはならない。
相互フォローは、面識にも承諾にもなりません。フォロワーへのDMで受任を勧めると、規程第5条第2項に触れます。他士業も、それぞれの会の規程が同じように媒体を問わず及びます。
もう1つ、忘れられやすいのが記録です。指針は、SNSのメッセージ機能による広告についても、リンク先のURLを含めてデータか印刷物を保存するよう定めています。投稿しっぱなしにできません。
まとめ|SNSとホームページで、書ける範囲は変わります
- 接骨院・鍼灸院:ホームページは原則として広告ではないが、SNSの投稿は広告になる。鍵アカウントでも同じ。限定解除が無いので、効果も経歴も書けない
- クリニック・歯科:SNSも広告。1つの投稿が単独で1つの広告として見られるので、自由診療は投稿の中で内容と費用とリスクまで完結させる。「詳しくはHPで」は通らない
- 士業:媒体の制限は無い。ただし相互フォローの相手へのDMは「面識のない者」への広告になる
ホームページの原稿をそのままSNSへ移す作業は、思っているより危ないということです。移す方向によっては、書ける範囲が狭くなります。
よくいただく質問
鍵アカウントなら大丈夫だと思っていました
指針は反対の書き方をしています。公開範囲を限っても、フォロワーは自分からその情報を求めたわけではなく、反応を通じて2次的、3次的に伝わる。だから認知性を満たす、という整理です。
限定公開は、規制を外す手段になりません。
昔の投稿まで消す必要がありますか
一律に消す必要はありません。まず、効果や経歴に触れている投稿を洗ってください。接骨院・鍼灸院なら、適応症、施術方法、研修歴、「各種保険取扱」のあたりが多いはずです。
指導は通常、まず中止や是正を求める行政指導から入ります。気づいた時点で直せば足ります。
インスタの「ストーリーズ」も対象ですか
医療の事例解説書は、投稿の中に「一定期間で限定公開されるもの」を含むと書いています。24時間で消える形式も、投稿として扱われると読むのが自然です。
患者さんが勝手に書いた口コミはどうなりますか
医療広告等ガイドラインは、個人が運営するウェブサイトやSNSの個人ページ、第三者の口コミサイトへの体験談について、医療機関が費用の負担などの便宜を図って掲載を依頼していなければ広告に当たらない、としています。自然に書かれたものを消して回る必要はありません。
危ないのは、それを公式アカウントが引用したときです。引用した側の広告になります。
出典を確かめたいです
この記事で引いた原文は、次の3本です。いずれも公開されています。
- あはき・柔整の広告指針(2025年2月18日・医政発0218第1号)
- 医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日 最終改正)と、医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 第6版(2026年3月30日)
- 日本弁護士連合会「業務広告に関する指針」
条文の番号まで添えてありますので、ご自身でも確認できます。読んだうえで自院の投稿をどう直すか迷ったときに、声をかけてください。
いまのSNSとサイトを、この観点で見ます
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- サイトとSNSをまとめて見てほしい場合は無料サイト診断へ
- 公開前に僕が見ている項目は医療・接骨院・士業のサイト公開前29項目に全部出しています
- ホームページ側の表現は医療広告等ガイドラインで書けない表現にまとめました
- 引き受ける範囲と金額はサービスと料金の考え方にあります
