「近所に移転してきた接骨院のホームページに、9割が完治すると書かれた自費メニューがありました。口コミは悪くないのですが、行っていいものか迷っています」
これは私が作った例ではありません。Yahoo!知恵袋に患者本人が書き込んだ相談で、2026年8月30日に開いて読みました。回答は2件ついていて、そのうち1件は医師からのものです。ページに書かれていた施術後の体の反応の説明について、医学的にはそういう現象はなく営業用の言い回しだと指摘されていました。
この一文を書いた院に、悪気はなかったはずです。自信のある自費メニューがあり、それが一番伝わると思った言葉で書いた。ところが読む側は、そこで手を止めました。
新患の問い合わせが伸びない院のホームページを見せてもらうと、料金表も地図も写真もそろっているのに、途中の一文だけが浮いていることがあります。書いた側から見れば売りで、読む側から見れば警戒の合図です。
そこで、患者が実際にどこで引っかかっているのかを数えました。Yahoo!知恵袋で接骨院・整骨院のホームページと広告に関する質問を68件集め、そのうち21件を1件ずつ開いて本文と回答まで読みました。
先に結果を書きます。患者側から出ていた16件のうち、料金の高さそのものを問題にした質問は0件でした。料金にからむ5件は、すべて「書いてあった内容と実際が違った」という相談です。残る11件は、書いてある表現そのものに引っかかっていました。
いまのホームページに同じ型の表現が残っていないか見てほしい場合は、無料のサイト診断にURLをお送りください。該当する箇所だけを抜き出して返します。
何をどう測ったか
測定日は2026年8月30日です。手順は次のとおりです。
- Yahoo!知恵袋の検索を「接骨院 ホームページ」「接骨院 広告」「整骨院 ホームページ」の3語で実行した
- 「接骨院 ホームページ」と「接骨院 広告」は検索結果を3ページ、「整骨院 ホームページ」は1ページめくり、質問タイトルを集めた
- 質問IDが重複していた1件を除き、68件のタイトルを一覧にした
- そのうち21件は質問ページそのものを開いて、本文・質問者の立場・回答数・ベストアンサーまで読んだ
検索画面に出た件数は「接骨院 ホームページ」が約358件、「接骨院 広告」が約535件、「整骨院 ホームページ」が約551件でした。ただしこれは画面に表示される名目の数字です。私が中身まで見たのは21件なので、以下の割合はすべて21件を分母にして読んでください。残る47件はタイトルだけを見ており、分類には使っていません。
質問文はそのまま引用せず、内容を短く要約しています。質問者や院名が特定できる書き方もしていません。
患者はどこで手を止めていたのか
開いた21件のうち、質問者が患者側だったのは16件、院側または制作・印刷を請け負う側だったのが5件でした。患者側16件の内訳です。
| 患者が引っかかった対象 | 件数 | 相談の中身(要約) |
|---|---|---|
| 効果を断定する書き方 | 4 | 「9割が完治する」「病院でも整体でも治らない症状が治る」「脊柱管狭窄症の治療ができる」 |
| 業務の範囲を超えて見える施術名・院名 | 4 | 看板の「骨盤矯正」「小顔矯正」、登録名と看板の名称が違う、ページの「背骨矯正」という表記 |
| 保険と料金の書き方 | 5 | 「保険診療できます」と書いてあるのに使えなかった、表示額と請求額が違った、自賠責の患者に商品券 |
| 写真・口コミの集め方 | 1 | 施術者と患者のツーショット写真は、無料や割引と引き換えに頼んだものだと回答者が説明 |
| 他をけなす・不安をあおる書き方 | 1 | 他の業種を否定する言い回しがページに並んでいる理由を尋ねている |
| 書いてある内容と施術の食い違い | 1 | 「ボキボキしない」と書いてあったのに首と背骨の矯正を受け、症状が悪化した |
いちばん多かったのは保険と料金の書き方で5件です。ただし中身を読むと、この5件も金額の高さを責めてはいません。たとえば、ホームページの表示は3,300円だったのに、会計は4,950円だったという相談があります。別の相談では、初回1,500円という表示と、実際に払った4,000円との違いが書かれていました。どちらも、書いてある数字と払った数字が食い違ったことへの不信です。
「高いから行かない」ではありません。「書いてあることが当てにならないから行かない」です。ここが、料金表を安くしても問い合わせが増えない理由になります。
院側・制作側からの5件も、性格がはっきりしていました。開業予定者がキャッチコピーを募集していたもの、院長が診療時間を広告に書いてよいか尋ねていたもの、ホームページ制作を前にSEO業者の営業文句が本当か確かめていたもの、規制を守らないチラシをまいている同業への対処を聞いていたもの、印刷業者が自由診療のメニューをチラシに載せてよいか確認していたものです。書きたい側も、どこまで書いてよいか分からないまま迷っています。
「治ります」と書くと、なぜ問い合わせが減るのか
ここで根拠になるのが、2025年2月18日に厚生労働省が出した指針です。
あはき・柔整広告ガイドラインとは、あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復の各施術所について、広告してよい事項と、ホームページに載せるべき事項・載せるべきでない事項をまとめた、保健所が指導するときの指針のことです。正式名称は「あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業若しくは柔道整復業又はこれらの施術所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針」といいます。
土台にあるのは柔道整復師法第24条です。この条文は広告してよい事項を並べたうえで、それ以外は広告してはならないと定めています。同法第30条第5号には30万円以下の罰金も置かれています。厚生労働大臣が指定している事項は「ほねつぎ(又は接骨)」「届出をした旨」「医療保険療養費支給申請ができる旨」「予約に基づく施術の実施」「休日又は夜間における施術の実施」「出張による施術の実施」「駐車設備に関する事項」です。施術内容も、症状名も、ここには入っていません。
指針は、ホームページに載せるべきでない例を実際の文言で挙げています。虚偽広告として扱うべき例として挙げられているのは「絶対安全な施術です。絶対に治る施術。」「どこへ行っても治らなかった方、諦めないで当院へお越しください。」「治ります、元気・健康にします、根本治療、自信があります」「○○の治癒率○○%」といった書き方です。「○%の満足度」「改善率〇%以上」「たった1回で効果を実感」も同じ欄に並んでいます。比較優良の例としては「日本一」「No.1」といった最上級の表現や「口コミサイトで1位を獲得」が挙げられています。
知恵袋で患者が引っかかっていた4件の効果表現は、この例示とほぼ重なりました。つまり、患者が違和感を持つ場所と、行政が指導の対象として例示している場所は、ほぼ同じところにあります。
不安をあおる書き方も指針に項目があります。「こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受療ください。」のように科学的な根拠が乏しいまま受療を誘導する表現は、載せるべきでないとされています。整骨院のページに他業種を否定する文が並ぶ理由を尋ねていた相談は、まさにこの型に当たります。
ホームページは広告規制の対象外なのですか
ここは誤解されやすい部分です。指針は、原則としてホームページは法の規制対象となる広告に該当しないと書いています。この点はクリニック向けの医療広告ガイドラインと事情が違うので、医療広告ガイドラインとホームページの関係をそのまま接骨院に当てはめると判断を誤ります。
ただし、指針には続きがあります。バナー広告、検索結果に連動して表示されるスポンサー枠、リスティング広告、動画広告、掲載料を払って載る施術所紹介サイトの紹介ページは広告として扱う、と書かれています。そして、そうした広告を入り口として閲覧するホームページも、広告と一体であることから規制対象として扱う、と続きます。
読み替えるとこうなります。ホームページを置いておくだけなら原則として規制の外ですが、そこへリスティング広告を1本でも出した時点で、リンク先のホームページごと広告として見られます。広告費をかけて集客を強めるほど、書いてある文言が問われる立場になります。
公開範囲が限られていないSNSの書き込みについても、同じ考え方で広告として扱うと書かれています。院のアカウントから施術の効果を書いている場合は、ここに当たります。
自費のメニューを載せるなら、指針が求めている3つ
指針は、自費の施術を行う施術所がホームページに載せるべき事項も挙げています。3つです。
- 表示している情報について問い合わせできる連絡先を明示する
- 自費施術の内容と、通常必要とされる費用を情報として出す
- 自費施術の主なリスク、副作用について情報を出す
2つ目には注記があります。標準的な費用がはっきりしない場合は、最低金額から最高金額までの範囲を示すなどして分かりやすく示すこと、回数券やプリペイドカードを売る場合は商品の内容と契約内容を正確に理解して買えるように表示すること、と書かれています。掲載場所についても、リンクの先のページに逃がしたり、利点の説明より極端に小さい文字で書いたりしないよう求めています。
知恵袋の料金トラブル5件は、この2つ目が抜けたときに起きる話でした。表示と請求が食い違った2件は、追加料金の条件がページに書かれていなかった例です。「保険診療できます」と書いてあったのに使えなかった1件は、保険が使える範囲がページに書かれていなかった例です。載せるべき事項をきちんと載せることが、そのままトラブルを減らす手になります。
書き換えの見本
知恵袋で実際に引っかかっていた表現を左に、指針の記述と突き合わせた書き換えを右に置きます。左は「こう書いているサイトがある」という引用で、私が推奨しているものではありません。
| 引っかかっていた書き方 | 何が問題か | 書き換えの案 |
|---|---|---|
| 「9割が完治します」 | 治癒率の表示は虚偽広告の例に挙げられている | 施術の対象と回数の目安を書く。「打撲・捻挫の施術は◯回を目安にしています」 |
| 「病院でも整体でも治らない症状が治ります」 | 治る旨の断定と、他との比較優良の両方に当たる | 何をする場所かを書く。「骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷の施術を行う施術所です」 |
| 「小顔矯正」「巻き爪」「耳つぼダイエット」 | 業務の範囲を超えて見え、患者から通報の相談が出ている | 自費で扱うなら内容・費用・リスクを同じページに並べる |
| 「保険診療できます」 | 保険が使える範囲が書かれておらず、来院後に食い違う | 対象を書く。「医療保険療養費の支給申請ができます(骨折・脱臼は医師の同意が必要)」 |
| 施術前・施術後の写真 | 撮影条件を変えた写真は誇大、加工した写真は虚偽として扱われる | 写真を外し、施術の流れと所要時間を文で書く |
| 「◯◯様の声」を並べたページ | 便益になる感想だけを選んで載せることは載せるべきでない側 | 声を外し、対応できる症状と対応できない症状を並べる |
| 「自賠責の患者様に商品券」 | 費用の過度な強調に当たり、患者から違反かどうかの質問が出ている | 特典を外し、自賠責で来院したときの流れと必要書類を書く |
右の列は、書ける事項の中で書き直す方向を示したものです。実際に直すときは、管轄の保健所に確認してから公開してください。判断は自治体の窓口が持っています。
いまのホームページを見る順番
自院のページを開いて、次の順で見ると早く終わります。
- トップページの見出しに、治る・改善・完治・◯%の4語が入っていないか
- 施術メニューの名前が、届け出ている業務の範囲から離れていないか
- 保険の説明に、使える対象と使えない対象の両方が書いてあるか
- 自費のメニューに、金額と、追加料金が発生する条件が書いてあるか
- 回数券を売っているなら、有効期限と返金の扱いが書いてあるか
- 施術前・施術後の写真と患者の声のページが残っていないか
- リスティング広告を出しているなら、その入り口から入ったときに1〜6が成立しているか
新潟市の接骨院を名簿で当たったとき、そもそもホームページを持っていた院は限られていました。数え方と結果は新潟市の接骨院118院のサイト保有率に置いてあります。持っている院にとっては、表現を整えるだけで差がつく状況です。
よくいただく質問
接骨院のホームページは広告規制の対象ですか
2025年2月18日の指針は、原則としてホームページは法の規制対象となる広告に該当しないとしています。ただしバナー広告・リスティング広告・動画広告・掲載料を払って載る紹介ページは広告として扱われ、そこから入るホームページも一体として規制対象になると書かれています。広告を出している院は、対象になっている前提で見てください。
「骨盤矯正」とホームページに書いてはいけないのですか
柔道整復師法第24条が広告してよいと定めている事項に施術名は含まれていません。看板やチラシに書いた場合、患者から保健所や厚生局への相談が実際に出ています。自費のメニューとして扱うなら、内容・費用・リスクを同じページにそろえるところまでが指針の求めている形です。個別の可否は管轄の保健所が判断します。
患者さんの声は載せてもいいですか
指針は、施術所にとって便益になる感想だけを選んで載せて強調することを、掲載すべきでない事項に挙げています。謝礼を払って良い感想を出させることも同じ扱いです。声の代わりに、対応できる症状と対応できない症状を並べたページのほうが、患者の判断材料になります。
施術前・施術後の写真は載せられますか
撮影条件や被写体の状態を変えて撮った写真で効果を強調することは、誇大なものとして扱うべきだと指針に書かれています。加工・修正した写真は虚偽広告の側に挙げられています。写真を外し、施術の流れと1回あたりの所要時間を文で書くほうが安全です。
表現を直すと問い合わせは減りませんか
今回の21件を読むかぎり、患者は強い言葉に反応して問い合わせていません。むしろ強い言葉を見つけて、行ってよいのか他人に確認しています。書いてある内容と実際が一致していることのほうが、来院の判断材料になっていました。
どこから直せばいいですか
トップページの見出しと、料金ページの2か所からです。この2か所は患者が必ず通り、今回の16件のうち9件がこの2か所に関する相談でした。全ページを一度に直す必要はありません。
まとめ|接骨院のホームページは表現から見直す
Yahoo!知恵袋の68件からタイトルを集め、21件を開いて読みました。患者側の16件のうち、料金の高さそのものを問題にした質問は0件です。料金にからむ5件も、書いてある内容と実際の食い違いでした。残り11件は、効果を断定する書き方、業務の範囲を超えて見える施術名、写真や声の集め方といった、表現そのものへの引っかかりです。
2025年2月18日の指針は、載せるべきでない表現を具体的な文言で例示しています。患者が違和感を持つ場所と、その例示は重なっていました。直す順番は、トップページの見出し、料金ページ、写真と声のページ、この3つです。
うちの料金と進め方は料金と進め方に出してあります。いまのホームページの表現をこの観点で見てほしい場合は、無料のサイト診断にURLをお送りください。該当箇所を抜き出し、書ける事項の範囲での書き換え案までつけて返します。
