先に結論を書きます。ユーザーテストで最初に確かめるべきなのは、テストのやり方ではなく「いま測ろうとしているURLが、本当に見てほしいサイトか」です。自分のサイトで3回まわしたうち、2回は公開をやめた旧バージョンを測っていて、観察19件のうち手戻りになったぶんが出ました。
自分のホームページにユーザーテストを3回かけました。1回目と2回目で見つけた課題は、合わせて4系統。ところが3回目の直前に、1回目と2回目は公開をやめたはずの旧バージョンを測っていたことが分かりました。旧版で見つけた4つの課題は、正しいサイトでは1つも当てはまりませんでした。
つまり、2晩かけて直そうとしていたのは、誰も見ていないページの欠点でした。
この記事では、3回ぶんの記録を失敗を含めてそのまま公開します。同じ回り道をしなくて済むように、測る前に確かめる3点も最後に置きました。当方が作った見本は制作実績と制作見本に業種ごとに並べてあります。いまのサイトを見てほしい場合は無料のサイト診断からURLをお送りください。
<!-- def --> ユーザーテストとは、作った人以外に実際の画面を触ってもらい、どこで迷うかを口を出さずに観察する調べ方のことです。感想を聞く場ではありません。
3回の記録を、先に並べます
| 回 | 実施日 | 測った対象 | 見た画面 | 観察の件数 | 4つの課題の結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 2026年8月8日 | 旧バージョン | パソコン | 7件 | 問題なし3・引っかかり1 |
| 2回目 | 2026年8月9日 | 旧バージョン | スマホ(375×812) | 6件 | 問題なし2・引っかかり2 |
| 3回目 | 2026年8月9日 | 正しいサイト | パソコンとスマホ | 6件 | 問題なし4・引っかかり0 |
観察は3回で合計19件。そのうち13件は、公開をやめた旧バージョンについての記録でした。
やり方はどの回も同じです。「接骨院の院長が、営業メールのリンクから初めてサイトを開く」という想定で、4つの課題を順にやってもらいました。第一印象、信頼できるかの判断、費用と進め方の確認、連絡手段を探すところまでです。連絡だけは、送信ボタンを押す直前で止めています。
1回目:見た目を評価できないまま終わった
2026年8月8日の夜、22時59分から23時28分まで。パソコンの画面で実施しました。
このとき、画面のスクリーンショットがいちばん上以外では白紙になるという不具合が出ました。ブラウザの操作ツール側の問題で、サイトのせいではないことは別途確かめています。そこで、見た目を見るのはあきらめて、ページの中身を文字とスタイルの数値として読み取る方法に切り替えました。
結果として1回目の記録には、こう書き残すことになりました。「視覚デザイン・レイアウト起因の課題は本UTでは検出できていない」。
この一文が、あとで効いてきます。測れなかったものを「問題なし」と書かなかったので、2回目で見た目を測り直す理由が残りました。
見つかったのは2つです。
- 「接骨院」という語が、トップページの本文に1度も出てこない。 対象業種の一覧はサービスページの奥にしかなく、そこまで進まないと自分が対象か分からない
- 費用の目安がどのページにもない。 「全案件、個別見積もりのみ」とだけ書いてあり、10万円台なのか100万円台なのかの見当がつかない
4つの課題のうち、引っかかりが出たのはこの費用のところだけでした。
2回目:スマホで測ったら、メニューが消えていた
2026年8月9日の深夜1時10分から1時28分まで。同じ課題を、今度はスマートフォンの画面幅(375×812)で実施しました。1回目でできなかった見た目の評価が、今回はできました。
出てきたのは、パソコンでは見えなかった2つです。
- ヘッダーのメニュー4項目が、スマホでは表示されない設定になっていた。 代わりのメニューボタンもなく、ヘッダーの中にボタン要素は1つもありませんでした。下の階層のページへ行く手段は、ページのいちばん下(約9,300px先)のリンクだけ
- 比較の表がスマホで崩れていた。 左の列は幅が0pxで完全に消え、右の列は幅40pxで、文字が1文字ずつ縦に折り返されていました
どちらも、感想ではなく画面の実測値です。表示スタイルの数値とスクリーンショットの両方で確認しました。
このとき同時に、課題として数えなかったものもあります。制作例の画像が最初のスクリーンショットで空白に写った件です。これは画像の読み込みが後から始まる仕組みと撮影のタイミングの問題で、サイトの不具合ではないと判断しました。
4つの課題のうち、引っかかりは2つに増えました。1回目より悪くなったわけではありません。測る画面を変えたので、それまで見えていなかったものが見えただけです。
3回目:そもそも、別のサイトを測っていた
ここで指摘が入りました。1回目と2回目で測っていたURLは、公開をやめた旧バージョンだったというものです。営業に使っている正しいサイトは別のドメインでした。
設定をやり直して、同じ4つの課題を正しいサイトで実施したのが3回目です。2026年8月9日の1時45分から2時10分まで。パソコンとスマホの両方を見ました。
旧バージョンで見つけた4つの課題が、正しいサイトでどうなっていたかを1つずつ照らし合わせた結果が、これです。
| 旧バージョンで見つけた課題 | 正しいサイトでの状態 |
|---|---|
| 「接骨院」の語がトップにない | 該当なし。 トップの対象業種欄に接骨院・整骨院を明記 |
| 費用の目安がどこにもない | 該当なし。 サービスページに料金の目安を税込で明記 |
| スマホでメニューが消える | 該当なし。 7項目すべて表示(2段に折り返し) |
| スマホで比較の表が崩れる | 該当なし。 幅281pxの縦積みで全項目が読める |
4つとも、当てはまりませんでした。
ここで大事なのは、これを「直った」と書いてはいけないことです。直したのではなく、測る対象が違っていただけです。記録にも「対象サイトが異なるため『解決』ではなく『新しい対象での該当有無』として記載」と残しました。
3回目は4つの課題すべてで引っかかりゼロ、確度の高い新しい課題はゼロ件でした。ゼロ件だからといって無理に課題をひねり出すのはやめて、確度の低い気づき2つだけを記録に残しています。契約条件の縛りに対する身構えと、トップページが16,671pxと長いことです。どちらも、この規模のテストでは判定できないという扱いにしました。
なぜ2回も間違えたのか
原因は、テストの技術ではありませんでした。
- 設定を書いた時点で、URLを確かめなかった。 テストの設定ファイルに対象URLを書く欄があり、そこに書いた瞬間が最後の確認機会でした。書いたあとは、誰も疑いません
- 旧バージョンが公開されたまま残っていた。 開けば普通に表示されるので、間違いに気づく合図がどこにもありません
- 見た目が似ていた。 同じ人が作った同じ構成のサイトなので、開いた瞬間の違和感がありませんでした
3つ目が厄介です。まったく違うサイトなら1秒で気づきます。似ているから2晩気づきませんでした。
なお、旧バージョンが公開されたまま残っている問題は、テストの範囲を超えた営業上の論点として記録に残し、後日リダイレクトの設定をしています。
測る前に確かめる3点
同じ失敗を避けるための、順番つきのチェックです。ユーザーテストに限らず、サイトの数字を測るとき全般に使えます。
1. 測る対象のURLを、声に出して確かめる
ブックマークや検索結果から開くのをやめて、名刺・営業メール・請求書に書いてあるURLと1文字ずつ照合してください。移転や作り直しの経験があるサイトほど、古いURLが生き残っています。
2. その道具が、本当に測れているかを先に確かめる
1回目は、スクリーンショットが白紙になる状態で見た目を評価しようとしていました。測れていないのに「問題なし」と書くのが、いちばん危ないです。測れなかったものは「測れなかった」と書いてください。
3. 道具の都合と、サイトの欠陥を分ける
3回のテストで、次の3つは「道具の都合」と判定して課題に数えませんでした。
- スクリーンショットが白紙になる(撮影ツール側の不具合)
- 制作例の画像が空白に写る(画像の読み込みタイミング)
- 数字のカウントアップが途中で止まる(画面が裏に回ると動きが止まる仕組み)
逆に、数字がJavaScript未実行の環境では0のままになる構造は、道具の都合ではなくサイト側の性質なので、課題として残しました。こちらはJavaScriptが止まると、実績の数字が全部「0」になっていたに詳しく書いています。
この線引きを毎回書き残すことが、いちばん時間を節約します。書いておかないと、次の回で同じものを「新しい課題」として数え直すからです。
この記録の限界を、先に書きます
正直に書いておきます。3回とも、人間の参加者は0名です。
AIが「接骨院の院長」という役でサイトを操作し、1つの観点から歩いた記録です。画面の数値やリンクの実測は事実として扱えますが、発話はすべて模擬で、実際の院長の言葉づかい・不安・目の動きを代表するものではありません。記録にも「頻度の一般化は行わない」と明記しています。
ですから「3回目で課題ゼロ件だった」は、「AI1観点では引っかかりが出なかった」以上のことを意味しません。実機を持った50代の院長1名にお願いする再テストは、まだ残っている宿題です。
それでも公開しているのは、測る対象を間違えるという失敗は、参加者が人間でもAIでも同じように起きるからです。むしろ人間の協力者に時間を使ってもらってから間違いに気づくほうが、損失は大きくなります。
まとめ|ホームページのユーザーテストで最初に確かめること
- ユーザーテストを3回実施し、観察は合計19件。うち13件は、公開をやめた旧バージョンについての記録でした
- 旧版で見つけた4つの課題は、正しいサイトでは1つも当てはまりませんでした。直したのではなく、測る対象が違っていただけです
- 原因はテストの技術ではなく、設定にURLを書いた時点で確かめなかったことと、旧バージョンが公開されたまま残っていたことです
- 測る前の確認は3点。対象URLの照合/道具が本当に測れているかの確認/道具の都合とサイトの欠陥の切り分け
- 測れなかったものを「問題なし」と書かないでください。測れなかったと書き残すことが、次の回を生みます
よくいただく質問
ユーザーテストは、何人に頼めばいいですか。
一般には5人前後で主要な問題の大半が見つかるとされています。ただし人数を増やす前に、測る対象と測る手段を固めるほうが先です。この記事のとおり、対象を間違えていれば何人集めても結果は使えません。まず1人、できれば実機のスマートフォンを持った方にお願いするところからで十分です。
自分のサイトを自分でテストしても意味がありますか。
見つかるものは限られますが、ゼロではありません。実際、メニューがスマホで消えている・比較の表が幅0pxで消えているといった実装の不備は、自分で測っても数値としてはっきり出ます。逆に「この文章で不安が消えるか」といった感じ方の部分は、自分では測れません。数値で出るものは自分で、感じ方は他人に、と分けるのが現実的です。
パソコンで確認すれば、スマホでも大丈夫ではないですか。
違います。1回目(パソコン)では引っかかりが1つだったのに、同じサイトを2回目(スマホ)で測ったら2つに増えました。増えた2つはパソコンでは存在しない問題です。当方のサイトにも「見る人の多くはスマートフォンです」と書いていますが、その前提でテストしていなければ意味がありません。スマホの実測についてはスマホでヘッダーが画面の33%を占めていた実測と直し方にも書きました。
テスト結果に「課題ゼロ件」と書いてあったら信用していいですか。
書いた人が何を測れなかったかを、併せて確認してください。この記事の3回目も課題ゼロ件ですが、それは人間の参加者0名・AI1観点という条件付きの結果です。条件と限界が書いていない「課題なし」は、測っていないだけの可能性があります。当方が測定結果を出すときは、測定日・方法・測れなかった範囲を併記するようにしています。考え方はサービスと料金の考え方にも書いています。
この記事の測定について
- 実施日:1回目 2026年8月8日、2回目・3回目 2026年8月9日
- 対象:1回目・2回目は当方サイトの旧バージョン、3回目は現行の正しいサイト
- 方法:接骨院の院長を想定した役でサイトを操作し、4つの課題(第一印象/信頼判断/費用と進め方/連絡手段)を実施。画面の寸法・表示スタイル・リンク先はブラウザ上の実測値
- 参加者:3回とも人間の参加者は0名。AIによる1観点の walkthrough です。発話はすべて模擬で、実在の院長を代表しません
- 連絡手段の課題は、送信の直前で停止しています。メール・DMの送信は行っていません
- 数値はすべて測定時点のものです。サイトはその後も更新しているため、現在の値とは異なります
人を集めなくても、対象を決めて画面を触るだけで、引っかかる場所は出てきます。難しいのは手順ではなく、誰の目で見るかを間違えないことでした。自分でやってみて結果の読み方に迷ったら、測り方を相談するへどうぞ。無料です。売り込みはしません。
